本稿では、二世帯住宅の間取りを検討するうえで大事な3つのポイントをご紹介します。親子で資金を出し合って注文住宅を建てたい方や、二世帯でほどよい距離感を保ちながら生活したい方は、ぜひ最後までご覧ください。
親子であっても、過度に自分たちの生活に干渉されるのは、あまり嬉しくないものです。「二世帯で暮らすと、いずれ不満が出てくるのでは?」と不安に感じる方も少なくないでしょう。間取りの工夫で問題を回避したいと思うのは自然なことです。
二世帯で暮らし始めてから間取りの問題に気づくと、取り返しがつきません。ぜひ本稿を、トラブルが起こりにくい間取りづくりにお役立てください。
二世帯住宅の間取りを考えるときのポイント
二世帯住宅の間取りを決める際は、以下の3つに注意してください。
- 予算を早めに決めておく
- よく話し合って間取りを決める
- 生活音対策はとくに気をつかう
「そんなの当然じゃないか」と思われるかもしれませんが、ここの詰めが甘く、あとで後悔される方が少なくありません。しつこいくらいしっかりと実施していただきたい、基本中の基本ポイントです。
それぞれ、詳しく解説していきましょう。
予算を早めに決めておく
建築工事に使える予算が決まれば、おおよその建物規模が決まります。建物規模が決まれば、世帯ごとに占有できる空間と共有する空間の割合が見えてきます。
「完全分離する間取り計画を立てたけど、予算が足りなかった」となると、計画が振り出しに戻ってしまいます。早めに予算を決め、予算に合った計画を進めていきましょう。
それぞれの世帯がいくらずつ出資して建てるのか、住宅ローンの負担割合はどうするのか、建築資金の出し方も検討しておきましょう。ずっと先の相続にまで影響しますので、ないがしろにできない項目です。
よく話し合って間取りを決める
世帯間や夫婦間で思いが違うのは、よくある話です。しっかりと合意が得られていないと、暮らし始めてからもめることになります。
相手任せは、絶対にいけません。間取りができあがるまで、徹底的に家族会議すべきです。親の思いを聞いたり、子の意見を聞いたり。将来まで見据えた話し合いから、かけがえのない家族の時間が生まれることでしょう。
親世帯には介護の不安、子世帯には子育ての不安がついて回ります。お互いにどの程度、暮らしのサポートを希望するのか、率直に話し合ってみましょう。
- 親世帯は、子世帯からどの程度の介護サポートをしてもらいたいのか
- 子世帯は、親世帯からどの程度の子守・家事サポートをしてもらいたいのか
お互いの生活時間帯のズレも、しっかり把握しておくとよいでしょう。朝方の親世帯と、夜型の子世帯。お互い気づかいあえるよう、間取りにも工夫が必要です。
子世帯に独立した兄弟姉妹がいるなら、帰省したときはどうするのか考えておきましょう。兄弟姉妹から見ると、これから建てる二世帯住宅は「実家」です。盆暮れ正月は泊まりたいとか、家財を預かって欲しいとか、そのような要望にどう対応するのか決めておきたいところです。
生活音対策はとくに気をつかう
多世帯が共同生活を送る場所の代表・マンションでもっともトラブルになりやすいのが、騒音問題です。家族どうしであっても「なあなあ」にせず、気を付けて置くに越したことはありません。
とくに小さいお子様は加減ができず、移動するだけでも大きな音を出してしまいます。この音が、親世帯にとってストレスにならないとも限りません。
親世帯の寝室の位置を配慮したり、2階の音が1階に伝わりにくいように防音措置を取ったり、できる工夫はしておきたいものです。
二世帯住宅にはどんなタイプの間取りがあるのか
ここまで何度か「分離・占有・共有」という言葉が出てきました。二世帯住宅の間取りでは、どこまで共有してどこから占有とするのか、その割合が肝所となります。
二世帯住宅は、その割合によって次の3タイプに分かれます。
- 完全分離型
- 一部共有型
- 完全共有型
それぞれ、もう少し詳しくご紹介しましょう。
完全分離型
完全分離型の間取りは、二世帯がいっさい生活空間を共有しません。お互いできるだけ干渉せず「スープの冷めない距離」で暮らしたい家族むけ、と言える間取りです。
完全分離型の間取りでは「1階は親世帯、2階は子世帯」のように階で分離するプランが多いでしょう。お互いの生活空間どうしをつなぐ入口も設けますが、1箇所程度です。
完全分離型間取りのメリットは、同居の世帯とお互い気兼ねなく暮らせることです。将来、片側だけ貸すことも、比較的カンタンにできます。
デメリットは、延べ床面積が大きくなりやすく、建築費がかかることでしょう。世帯間のコミュニケーションが不足しやすいのも、注意すべきポイントです。
一部共有型
一部共有型の間取りは、ほどよく助け合いながら暮らしたい家族むけです。どこを共有するかで、両世帯がつながる範囲を調整できます。
たとえば、こんな感じで共有します。
- 玄関・玄関ホール共有
- キッチン共有
- 風呂共有
- セカンドリビング共有
- バルコニー共有
一部共有型間取りのメリットは、各世帯の独立性を確保しながら、必要におうじて助け合えることでしょう。生活の中でお互いの様子がわかる瞬間があるのも、この間取りの長所です。
デメリットは、どこを共有スペースにするのか決める話し合いが難しいところです。親世帯と子世帯で思いに違いがあると、なかなかスムーズに決まりません。
完全共有型
完全共有型の間取りでは、両方の世帯が寝室以外の生活空間を共有します。昔ながらの居住スタイルで、みんなで助け合う家族や、生活時間にズレがない家族むけです。
メリットは、延べ床面積が小さくて済み、建築コストが下げられることでしょう。他の2タイプに比べて売りやすいのも、メリットと言えるかもしれません。
デメリットは、自分のスペースやプライベートな時間を確保しづらいことです。四六時中顔を合わせることになるので、親世帯とお嫁さん、あるいはお婿さんのコミュケーションには配慮が必要です。
二世帯住宅の間取りを検討する際に大切なポイントまとめ
二世帯住宅の間取りは、どこまで占有にしてどこから共有にするのか、その割合で大きさが変わります。大きさは建築費に直結するので、しっかりご予算と相談しながら検討していく必要があります。
住み始めてから不満が出ないように、その家で住む家族全員でしっかり家族会議しておくことも大切です。自分の主張だけを通そうとするのではなく、お互いに思いやる気持ちも必要です。
家族間で調整が難しいときは、建築会社のアドバイスも聞いてみましょう。経験豊富な建築会社であれば、納得感のある助言をおこなってくれるでしょう。