新築間取り

家族が広いリビングに集い、ゆったりと過ごす暮らし……ドラマや映画に登場する、誰しもあこがれる光景です。新築で家を建てるなら、そんな理想のリビングをつくりたいですよね。

とは言え、リビングにはいろいろな制約があり、思いどおりの広さにできるわけではありません。限られた床面積の中で他の部屋の広さはどうするのか、柱も壁もない大空間がちゃんと地震に耐えられるのか……など、考えるべきことがたくさんあるのです。

あなた自身がリビングの広さについてちゃんと語れたら、きっと家づくりが楽しくなることでしょう。新築の間取りを検討する前に、本稿で理想的なリビングの広さについて学んでみませんか?

理想的なリビングの広さの目安

まずは、一般的な住宅のリビングがどれくらいの大きさなのか、みていきましょう。

快適に過ごせるLDKの広さは?

現代の住宅は、リビングだけが個室になっているケースはまれです。ほとんどはリビング・ダイニング(LD)、またはリビング・ダイニング・キッチン(LDK)でひとつの部屋になっています。

では、平均的なLDKの大きさはどれくらいなのでしょうか?

一般的なLDKは14~24帖くらいが多い印象です。ですが、小さいLDKは8帖くらいからありますので、8~24帖までおおよその特徴をご紹介しましょう。

▼8~12帖のリビング

アパートや1~2人世帯むけマンションのLDKに多いサイズ。「不動産の表示に関する公正競争規約施行規則」において「LDK」と表記していい最低基準の大きさが、8帖ないし10帖以上となっています。

▼12~16帖のリビング

ミニマルサイズのLDK。置ける家具が、制限されます。16帖あると、じゅうぶん広いとは言えませんが、基本的な家具が置けるでしょう。

▼16~20帖のリビング

一般的に多い間取りのLDKで、基本的な家具を置いても余白があるサイズです。4人家族であれば、20帖でじゅうぶん快適な広さと言えるでしょう。収納やパントリーも取れます。アップライトピアノの置き場所もつくれます。

▼20~24帖のリビング

ゆったりと過ごせるLDKで、大人数で集まっても圧迫感が少ないサイズです。アイランドキッチンも設置しやすいでしょう。収納やワークスペースを増やすことも可能。ただし、耐震上の問題がないか検討が必要な広さです。

よくある広さのLDKを、4つに区切ってご紹介しました。ですが、広さの感覚はひとそれぞれです。あなたやご家族が「快適」と感じる広さを知っておくこともお忘れなく。

少なくとも、今のお住まいのLDK空間が狭いと感じているのか広いと感じているのか、把握しておきましょう。

リビング単独で欲しい広さは?

現在はLDKでひとつの空間をつくることが多い、と書きました。しかし、リビングだけをスキップフロアにすることもあります。そんなとき、リビング部分だけで何帖くらいあるといいのでしょうか?

ご家族の人数や置く家具にもよりますが、目安として8帖くらいあると快適に使いやすいでしょう。8帖を切ると、やや狭く感じます。

スキップフロアについては、こちらの記事でも詳しく解説しています。ご興味がある方は、あわせてご覧ください。

スキップフロアのデメリットは?老後は大丈夫?後悔や失敗を避ける方法

LDKの広さに影響を与える要素

リビングは、必ずしも思いどおりの大きさにできるわけではありません。たとえば、以下のものがリビングの広さの制約になります。

  • キッチンのタイプ
  • リビング・ダイニングに置く家具
  • 世帯人数
  • 構造や工法

順番に、もう少し詳しく解説します。

キッチンのタイプ

設置したいキッチンのタイプしだいで、大きなLDKが必要になります。逆に言えば、LDKの広さしだいで設置できるキッチンのタイプが決まる、とも言えます。例をあげてみましょう。

  • 壁付けのI型キッチン ⇒ ミニマルサイズのLDKに収まる
  • 対面キッチン ⇒ 14帖くらい必要
  • アイランドキッチン ⇒ 大きな面積のLDKが必要

どうしても採用したいキッチンがあるなら、それに合わせたLDKの広さが取れるように、間取りの最優先事項としましょう。

リビング・ダイニングに置く家具

家具を置くには、家具そのものの面積と動線(通路)を確保せねばなりません。LDKに置きたい家具があるなら、必ず建築会社に伝えておきましょう。プランができたあとに伝えると、イチからつくり直しになることもあり得ます。

たとえば、お手持ち品で新居でも使う家具はありませんか?リビングにソファとテーブルを置くなら、それぞれサイズはどれくらいですか?ピアノを置くご予定はないですか?

設置する予定の家具は、間取りのプラン上にも落とし込んでもらいましょう。

世帯人数

世帯人数は、家具のサイズに影響します。たとえば、ダイニングテーブル。2人がけなのか、4人がけなのか、6人がけなのか。それぞれ、ずいぶん設置に必要な面積が違います。ソファも、同様に注意が必要です。

世帯人数は、間取りにも影響します。私室や寝室、トイレの数は、ご家族の人数によって変わってくるでしょう。おのずから、限られた床面積の中でLDKに使える大きさも決まってきます。

構造や工法

建物の構造や建築工法は、リビングの広さの限界に影響します。構造や工法によって、壁や柱なしでつくれる空間の限界が違うのです。

たとえば、木造より鉄骨造やRC造のほうが広い空間をつくれます。同じ木造でも、ツーバイフォー工法より在来工法(軸組工法)のほうが広い空間をつくれます。

リビングの広さを考える際の注意点

つづいて、リビングの広さを考えるうえでご注意いただきたいポイントを6つご紹介します。

住宅展示場や雑誌は参考になりづらい

住宅展示場のモデルハウスは広すぎて、一般的な住宅の間取りとかけ離れています。見学するときは「このLDKは何帖ですか?」と確認していただき、一般的な16~20帖のLDKよりどのくらい大きいのか、把握してから見るようにしましょう。

住宅雑誌の写真も、参考にならない場合があります。よくLDKの写真と面積(帖数)が載っていると思いますが、広角カメラで撮った写真は実際よりかなり広く見えるので注意が必要です。

おすすめは、実際に住む方がおられる物件の完成見学会です。家具が置かれていない場合は広く見えるので少し注意が必要ですが、雑誌や大手ハウスメーカーのモデルハウスより参考になります。

面積が小さいリビングは壁の量に注意

リビングの面積が狭いと、壁量が少なくなりがちです。つまりそれは、テレビボードやリビングチェストなど、家具を置く場所が減るということです。家具を置くための壁を残し忘れないように、ご注意ください。

大型家具も置きづらいでしょう。そんなときはソファを置かず、ダイニングチェアやパーソナルチェアで兼ねるという選択肢もあります。ダイニングテーブルもエクステンション式(伸長式)のものにして、食事のときだけ広げる方法もあります。工夫しましょう。

バリアフリー住宅にしたい方は、引き戸を多用されるかもしれません。引き戸も、扉を引くための壁が必要です。ちゃんと壁が残るように考慮したプランをつくりましょう。

狭いLDKは家具の高さに注意

狭いLDKでは、家具の高さも注意したいところです。目線より高い家具は圧迫感が出て、余計に部屋が狭く感じます。積極的に、背が低い家具を使うとよいでしょう。

収納にも気を配る

LDKは、面積の割に収納が少なくなりがちです。収納が少ないと、LDKに物があふれやすくなります。その結果、収納用の置き家具を増やしてしまい、余計にゴチャゴチャとした印象のLDKになります。

いっぽう、ちゃんと収納があると、いつもLDKがスッキリかたづきます。多少LDKの広さを犠牲にしても、しっかり収納をつくっておくことが大切です。

ワークスペースも検討する

コロナウイルスの感染拡大を機に、働き方が変わりました。在宅ワーク(テレワーク)を導入する企業が増加したことで、リビングやダイニングで仕事をする人も増えました。

現在の住まいのリビングの一部をワークスペースに転用した方は、作業のしにくさに困っています。これからのリビングは、くつろぎだけでなく、仕事のしやすさも考慮する必要があるでしょう。

もちろん、書斎がつくれる方は問題ありません。リビングで作業する機会がある方は、しっかりと「ワークスペース」を確保していただくほうがよいでしょう。

耐震等級だけでなく直下率にも気を配る

地震の際、大空間のLDKが弱点になるケースもあります。柱も壁もない大空間は直下率が低くなりやすく、建物の倒壊を招きやすくなるのです。

直下率には「柱の直下率」と「壁の直下率」の2つがあります。柱の直下率とは、2階の柱の下に1階の柱がどの程度あるかを示す値のこと。適正値は60%以上と言われていて、50%を切ると急激に事故の割合が増します。

いっぽう壁の直下率とは、2階の壁の下に1階の壁がどの程度あるかを示す値のことで、適正直下率は50%以上 と言われています。

この「直下率」は、熊本地震で注目されました。本来、震度6強~7の地震が起こっても補修により引き続き住めるはずだった「耐震等級2」の長期優良住宅が、直下率不足が原因で倒壊してしまったのです。

広いLDKは開放的でよいのですが、ちゃんと安全が確保できるプランを考えましょう。

LDKの間取りしだいで感じる広さが変わる

LDKは、物理的な広さだけに注目してはいけません。じつは、リビング・ダイニング・キッチンの配置のしかたで、広さの感じ方が変わってきます。

LDKの配置を3つご紹介しましょう。

直線型配置のLDK

LDKが一直線に並んでいる箱形の間取りは、物理的な広さがストレートに伝わります。大きいLDKは、ゆったり感じるでしょう。

このタイプのLDKは、狭くても機能的な空間がつくりやすいので、狭小地にむいている配置です。「LDKはできるだけコンパクトにして、隣に和室をつくりたい」という方にもおすすめです。

直線型配置のLDKは、16帖以上がおすすめです。16帖あると、LDKによくある基本的な家具が置けます。

L型配置のLDK

ダイニングを支点にLDKを90度に配置すると、リビングからややキッチンが見えにくくなります。来客時に少しでもキッチンを隠したい方にむいている間取りです。

L型配置のLDKは、空間に変化があっておもしろい間取りです。全てが見渡せないので、実際の面積より広く感じさせる効果もあります。

ただし、直線型配置に比べて動線等に必要な面積が増えます。ですから、18帖以上がおすすめです。

変形型配置のLDK

積まれたレンガのように「リビング」と「ダイニング・キッチン」をずらして配置した間取りのLDKもあります。L型配置と同様に、空間に変化が出て個性的なLDKになります。

この間取りも、LDK全体が見渡せません。見えない部分があることで、実際の広さより広く感じられます。

変形型配置のLDKは「リビング」と「ダイニング・キッチン」が半個室状態になります。圧迫感が出ないように、リビングは8帖、ダイニング・キッチンは12帖、あわせて20帖以上あるとよいでしょう。

まとめ

リビングは家族が一緒に過ごす空間ですから、広さや雰囲気など、徹底的にこだわりたいところです。しかし、制限なくいくらでも広くできるわけではありません。

限られた床面積の中でどの程度をリビングに割けばいいのか、そこで家族が快適に過ごすにはどうすればいいのか……考えるべきことがたくさんあります。

迷ったときは、経験豊富な建築会社に相談して、実例を見せてもらうとよいでしょう。弊社でも、こだわりのリビングの実例をご紹介しています。ご興味ある方は、参考にご覧ください。

家族が集まる広々リビングの家